深化するパラスポーツボランティアの視点:多様な参加者との共創
経験を積み重ねた先に広がる、新たな理解の地平
長年にわたりパラスポーツの現場でボランティアとして活動してまいりました。多くの大会やイベントで、多様なアスリートや参加者の皆様と関わる中で、様々な経験を積ませていただきました。当初は、自身の経験や知識に基づき、円滑な大会運営や参加者のサポートに努めることが中心でした。しかし、活動を重ねるにつれて、従来の経験だけでは対応しきれない、新たな課題やニーズに直面する機会が増えてきたと感じております。それは、パラスポーツに参加される方々の障害特性が多様化し、それに伴う個別のサポート要求がより顕著になってきたためではないかと考えております。
従来の枠を超えた「個別対応」の必要性
例えば、以前は身体障害を持つ方々への車椅子操作補助や移動支援が主な役割でしたが、近年では、視覚障害、聴覚障害、発達障害、精神障害、内部障害など、多岐にわたる特性を持つ方々がパラスポーツに参加されています。中には、複数の障害を併せ持つ方もいらっしゃいます。
ある年の車いすバスケットボールの練習会での出来事です。参加者の中に、車いすを使用しながらも、発話によるコミュニケーションが困難な方がいらっしゃいました。これまでの私の経験では、車いすの操作補助や、視覚的な合図での誘導が主な支援方法でした。しかし、この方の場合、視覚的な情報伝達に加え、ジェスチャーや筆談、さらにはスマートフォンを用いたコミュニケーションツールの活用など、複合的なアプローチが求められました。
初めは戸惑いもありましたが、試行錯誤を重ねる中で、参加者の細かな表情の変化や、わずかな身体の動きから意図を読み取る努力を続けました。また、ご家族や他のサポートスタッフから、その方の特性やコミュニケーション方法について丁寧に教えていただくことで、少しずつ意思疎通の糸口を掴むことができました。最終的には、その方が望む形で練習に参加できるよう、環境調整や他のボランティアとの連携を密に行うことができました。
「支援」から「共創」へ:視点の転換
このような経験を通して、私は「支援する側」と「される側」という従来の二元論的な視点から、「共に活動を創り上げる」という「共創」の視点へと意識が変化していきました。参加者の皆様は、単にサポートを必要とする存在ではなく、それぞれの個性や能力を持ち、スポーツを通じて自己を表現し、成長を遂げる「主体者」であるということを改めて認識させられました。
これは、ベテランボランティアとしての私の固定観念を打ち破る貴重な体験でした。長年の経験で培った知識やスキルは確かに重要ですが、それが全てではないと痛感しました。むしろ、目の前の参加者の個性と向き合い、既存の方法に囚われず、柔軟に対応することこそが、より質の高いボランティア活動に繋がるのだと理解を深めました。
若い世代との連携と、学び続ける姿勢
また、若い世代のボランティアの方々との協働からも、多くの示唆を得ています。彼らはデジタルツールや新しいコミュニケーション方法に長けており、多様性に対する感度も高いと感じます。私の経験と、彼らの柔軟な発想や新しいアプローチが融合することで、より効果的なサポートが実現することもありました。例えば、前述のコミュニケーション支援のケースでは、若いボランティアが即座にスマートフォンの翻訳アプリやUDトークの活用を提案し、具体的な操作方法を教えてくれました。
これは、長年の経験を持つベテランであっても、常に学び続け、自身の知識やスキルをアップデートしていくことの重要性を示しています。パラスポーツの現場は常に変化しており、参加者のニーズも多様化の一途を辿っています。自身の経験を活かしつつも、新しい知見や技術を積極的に取り入れ、他のボランティアと連携を深めることで、私たちはより一層、質の高い活動を提供できるのだと確信しています。
終わりに:深化するボランティア活動の未来
パラスポーツのボランティア活動は、単に人助けに留まるものではなく、私たち自身の人間性を豊かにし、社会における多様性への理解を深める貴重な機会であると捉えております。長年の経験を活かしつつ、これからも多様な参加者の皆様との出会いを大切にし、共に学び、成長し、「共創」していく姿勢を追求してまいりたいと考えております。パラスポーツの現場で得られる示唆は尽きることがなく、その奥深さに改めて魅力を感じています。